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「やりたいことがない」子どもが増えている背景

「やりたいことなんてない」「将来の夢なんて特にない」と話す子は、いまの中高生では珍しくありません。そこで不安になり、「ちゃんと夢を決めなさい」と急がせると、本人はますます苦しくなってしまいます。
いまはVUCA(先が読みにくく、変化が激しく、正解がはっきりしない)時代です。ひとつの会社で一生働く前提も崩れ、職業の数も働き方も多様化しました。そんな社会で「10代で一生モノの夢を決める」ほうが、むしろ例外だと考えたほうが自然です。
なぜ子どもは「やりたいこと」を決められないのか

選択肢が多すぎて基準が分からない
子どもたちの前には、かつてないほど多様な職業が並んでいます。YouTuberやエンジニアなど、名前は知っていても実際の仕事の中身は見えにくいものも多いです。その結果、「何を基準に選べばいいのか分からない」という状態になりやすくなっています。
SNSで「キラキラした他人」と比べてしまう
SNSを開けば、同年代で活躍している人たちの情報が次々と流れてきます。「あの人はもう夢に向かって頑張っているのに、自分は…」と比べてしまい、「ここまでできない自分が夢なんて語れない」と感じてしまう子も少なくありません。
「失敗しない完璧な夢」を探して動けなくなる
失敗したくない気持ちが強い子ほど、「一発で正解の夢を当てたい」という意識が強くなります。その結果、「本当にこれでいいのか」と悩み続け、何も決められないまま時間だけが過ぎてしまうのです。
「やりたいこと」はスタートではなく“結果”で育つ

ここで大切なのは、「やりたいことは最初から決まっているものではなく、行動の結果として育つ」という視点です。
多くの場合は、
- なんとなくやってみる
- 意外と楽しい・得意だと気づく
- 「もっとやりたい」に変わる
という順番で進みます。最初からハッキリした夢を持つ子は少数派で、「ちょっと気になること」「少し試してみたいこと」を増やす中で、興味が形になっていきます。
「やりたいことがない」は、「可能性がない」というサインではありません。むしろ「まだ知らない世界が多く、選べるだけの材料が足りていない」という状態だと捉え直すことができます。
親ができるサポート① 小さな「実験」のハードルを下げる

いきなり「将来の夢は?」と聞かれると、多くの子は固まってしまいます。そこで大事なのは、週単位・月単位の「小さな実験」に落とし込んであげることです。
- 一週間だけ、この本を読んでみる
- 一度だけ、気になる習い事の体験に行ってみる
- 今学期だけ、いつもと違う委員会を選んでみる
など、期間と覚悟のハードルをぐっと下げます。そして「続いたかどうか」よりも、「試してみたこと」そのものを評価します。
声かけとしては、
「一回やってみて、合わなかったらやめてもいいよ」
と伝えることで、挑戦の心理的ハードルが下がります。
親ができるサポート② 比較ではなく「言語化」を手伝う

子どもが何かをやってみた後の関わり方も、とても重要です。
- 「それは向いてないからやめたら?」
- 「そんなの将来役に立たないよ」
と親の価値観でジャッジしてしまうと、子どもは本音を隠すようになります。そこで、結果の良し悪しを評価するのではなく、「どう感じたか」を言葉にする手伝いをします。
たとえば、こんな質問が有効です。
- 「どこが一番おもしろかった?」
- 「逆に、イマイチだなと思ったところは?」
- 「もう一回やるとしたら、どこを変えてみたい?」
こうした対話を重ねることで、子どもは少しずつ、
- 自分の得意・苦手
- 好き・嫌い
- 大事にしたい価値観
をつかめるようになっていきます。
親ができるサポート③ 「決めていない状態」を否定しない

VUCAの時代では、「まだ決めていない」という状態も、ごく健全な選択肢の一つです。
それなのに、
- 「早く将来のことをちゃんと決めなさい」
- 「夢がないなんて、やる気がない証拠だ」
といった言葉を投げかけてしまうと、子どもは本心ではない“それっぽい夢”を口にしがちです。すると、本当の意味での探究は止まり、「親に褒められそうな答え探し」だけが残ってしまいます。
そこで、言葉を少し言い換えてみます。
- 「今は、いろいろ経験を増やしていく時期だね」
- 「決まっていないからこそ、試せることがたくさんあるね」
親は「早く決断させる人」ではなく、「安心して試せる場を守る人」というスタンスで隣に立つことが大切です。
まとめ:不確実な時代だからこそ「今この瞬間の経験」が大事

将来の見通しを正確に立てることは、大人であっても簡単ではありません。だからこそ、「今この瞬間をどう過ごすか」「どんな経験を重ねるか」が、以前にも増して重要になっています。
- 「やりたいことがない」は怠けではなく、情報が多く不確実な時代だからこそ自然な状態
- やりたいことは、最初から決まっているのではなく、行動の結果として育つ
- 親は、小さな実験を後押しし、感想の言語化を手伝い、「決めていない状態」も肯定する
こうした関わり方ができると、子どもの「やりたいこと探し」は、不安な作業から、少しワクワクするプロセスへと変わっていきます。親子で一緒に、試行錯誤の旅を楽しむ感覚を持てると、進路の悩みも少し違って見えてきます。
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プロフィール:
和田晶平 スタディブレイン和歌山駅東口教室勉強コーチ
哲学と歴史が大好き 最近は中国古典にハマっている
スタディブレイン和歌山駅東口教室