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勉強の仕方

暗記だけじゃダメ?――実は“知識こそが思考力と理解力の土台”だったという科学的事実

「暗記ばかりの勉強には意味がない」「考える力が大事だ」――そうした主張を耳にすることは少なくありません。確かに、単なる詰め込みでは実社会で役立つ力は身につかないように思えます。しかし、本当に“暗記=無意味”なのでしょうか?

実は、近年の認知科学や教育心理学の研究では、知識の蓄積(つまり暗記)こそが、思考力や理解力を支える土台であることが明らかになっています。本記事では、「なぜ知識が必要なのか」「暗記と理解の関係」「効率的な勉強法」について、科学的根拠をもとに解説します。


「知識がないと思考も理解もできない」って本当?

結論から言えば、「はい、本当」です。

アメリカの教育心理学者ダニエル・ウィリンガム(Daniel Willingham)は、著書『Why Don’t Students Like School?』の中でこう述べています。

“思考は知識によって駆動される(Thinking is driven by knowledge)”

この主張は、脳科学や認知心理学の研究と一致しています。思考力とは、ゼロから何かを生み出す力ではなく、「頭の中にある情報(知識)」を使って、「新しい理解や解決策を導き出す」プロセスなのです。つまり、知識がなければ思考する材料すら存在しないというわけです。


知識があると、なぜ理解しやすくなるのか?

🧠 スキーマ理論:知識が「理解の土台」になる

人間は、持っている知識(スキーマ)を使って新しい情報を理解します。

たとえば「光合成」という言葉を理解するには、「植物」「酸素」「二酸化炭素」「日光」などの基礎知識が必要です。何も知らなければ、その意味を理解することすらできません。

つまり、知識があることで、新しい情報が意味づけされ、スムーズに理解できるのです。


🧠 作業記憶の負担が減る

人間の作業記憶(ワーキングメモリ)は容量が限られています。しかし、あらかじめ知識が入っていれば、脳はそれを「一塊の情報(チャンク)」として処理できます。

例:英語の文章を読むとき、単語をいちいち辞書で引いていては内容を理解できません。単語の意味をすでに知っていれば、読むスピードも上がり、内容理解に集中できます。


🧠 推論や類推ができる

知識が豊富だと、「これは以前に学んだ○○と似ている」といった類推が可能になります。

例:ベクトルを学ぶときに、すでに座標や一次関数を知っていれば、「直線上の方向と大きさ」として理解しやすくなります。

知識は応用力の土台でもあるのです。


🧠 記憶に定着しやすくなる(ネットワーク効果)

人の記憶は、関連づけられた情報ほど残りやすいという特性があります。

新しい知識は、すでに持っている知識ネットワークに結びつけられることで、長期記憶として定着しやすくなります。


🧠 「わかる!」が集中力につながる

理解できる内容に触れると「わかった!」という快感が得られ、学習が楽しくなります。これは心理学でいう「フロー(没入)」状態を生み、集中力とやる気を引き出します。

知識がある人ほど、「理解できる快感」を得やすく、勉強も長続きします。


暗記は「第一歩」であり「無意味」ではない

「理解すれば暗記は不要」という主張を耳にすることがありますが、これは誤解です。理解と記憶は相互に補完し合う関係にあります。

  • 記憶のない理解は持続せず
  • 理解のない記憶は応用できず

つまり、暗記した知識を土台にしながら、それを繋ぎ、整理し、応用することで「理解」が生まれるのです。


科学が証明する:知識と成績の相関関係

ハーバード大学などで行われた大規模な研究では、「知識量が多い生徒ほど、読解力・数学力・思考力においても高いパフォーマンスを発揮する」というデータが明らかになっています。

特に背景知識(トピックに関する事前知識)の量が、読解力に直接影響するという結果は有名です。つまり、たくさんのことを知っている人ほど、文章を深く理解できるのです。


思考力を鍛えたいなら、まずは“土台の知識”を固めよう

もしあなたが「思考力を身につけたい」と考えるなら、まずやるべきことは、基礎的な知識をしっかり覚えることです。たとえば:

  • 英語:基本単語・文法の暗記
  • 数学:公式・定理の定着
  • 社会:歴史の流れや地理の知識の理解
  • 理科:用語や法則の記憶

これらが揃ってこそ、「なぜそうなるのか?」「他の事象とどう関係しているのか?」といった深い思考が可能になります。


効率的に“暗記+理解”を進める方法

最後に、知識をただ機械的に覚えるのではなく、「理解に繋がる暗記法」のコツをご紹介します。

  • 関連付けで覚える(意味記憶)
     例:歴史の出来事を因果関係で覚える
  • 具体例を使う
     抽象的な知識は実例と結びつけて覚えると理解が深まる
  • 自分で説明する
     “教えるつもりで”覚えると、思考を伴った記憶になる
  • 復習間隔を空ける(分散学習)
     短期集中よりも、時間を空けて繰り返す方が長期記憶に定着する

まとめ:思考も理解も「知識がなければ始まらない」

「暗記だけじゃダメ」は正しい。しかし、「暗記がダメ」ではありません。むしろ、暗記(知識)こそが理解と思考の出発点なのです。

情報化社会の現代では、ただ知識を集めるだけでなく、それを使いこなす力が求められています。ですが、その「使いこなす」ためには、まず知識がなければ始まりません。

勉強においては、地道な知識の積み重ねが、やがて大きな思考力・理解力へと育っていくのです。

勉強での具体例に関しては、こちらの記事に記載しています。

参考:解説を読んでもわからない…それ、前提知識が足りていません!今は飛ばしてOK! | スタディブレイン

プロフィール:

和田晶平 スタディブレイン和歌山駅東口教室勉強コーチ

哲学と歴史が大好き 最近は中国古典にハマっている

スタディブレイン和歌山駅東口教室

住所:〒640-8323 和歌山県和歌山市太田2丁目2−15 岡三ビル3階