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「わからないから教えて」が思考を止める。自力を奪う「親切すぎる指導」の正体

「わからない問題があったら、すぐに先生に聞きなさい」 「親切に、一から十まで丁寧に教えてくれる塾が良い塾だ」
こうした考え方は、一見すると効率的で正しい教育のように思えます。しかし、ここには恐ろしい落とし穴が隠されています。実は、安易に「教わる」ことは、脳が最も成長すべき「思考のプロセス」をスキップさせ、依存心を植え付ける毒にもなり得るのです。
今回は、なぜ「すぐに教わること」が危険なのか、そして真の学力を育てるために必要な「耐性」について徹底解説します。
1. 脳は「答え」ではなく「探索」で進化する

脳科学の視点から見ると、学習の最も重要な瞬間は「答えがわかった時」ではありません。「どうしてだろう?」「どこにヒントがあるんだ?」と、脳が必死に情報のネットワークを検索している時間こそが、知能を最も高めるゴールデンタイムです。
- 検索コストを支払わない脳の末路: 現代は検索一つで答えが出る時代です。しかし、勉強において答えをすぐに与えられる(ティーチングを受ける)ことは、脳の「検索能力」を退化させます。自力で答えを導き出す「コスト」を支払わない脳は、新しい問題に直面したときに、すぐに思考を停止する「フリーズ体質」になってしまいます。
- ドーパミンの報酬系: 自力で解決した時に分泌される「アハ体験」のドーパミンは、記憶を強固に固定します。しかし、人から教えられた答えでは、この報酬系は十分に作動しません。結果として、「教わったことは、すぐに忘れる」という悪循環に陥ります。
2. 「親切すぎる指導」が依存心を生む

手取り足取り教える指導は、短期的には「わかった気になる」ため、生徒も親も満足度が高くなります。しかし、これは**「補助輪を外さない自転車の練習」**と同じです。
- 思考のラストワンマイル: 解説の9割を先生が話し、最後の1割だけを生徒に計算させる。これは「教えた」ことにはなりますが、生徒が「考えた」ことにはなりません。最も苦しく、かつ最も価値のある「解法の糸口を見つける(ラストワンマイル)」という作業を先生が代行してしまっているからです。
- 試験本番は「孤独な戦い」: 入試会場には、ヒントをくれる先生も、優しい解説書もありません。普段から「教わる」ことに慣れきってしまった生徒は、試験会場という「誰の助けも得られない環境」で、一気にパフォーマンスを低下させます。
3. 「良い質問」と「悪い質問」を見極める

わからないことを聞くこと自体は悪くありません。問題なのは、その「聞き方」です。
- 悪い質問(依存型): 「これ、どうやるんですか?(丸投げ)」 「答えが合いません。どこが違いますか?(確認の放棄)」 これらは自分の思考を停止させ、相手に解決を委ねる質問です。
- 良い質問(自走型): 「自分はこう考えたのですが、ここから先が進みません」 「この公式を使おうとしたのですが、問題文のこの条件と矛盾しませんか?」 自分の思考プロセスを提示し、「壁」の正体を特定しようとする質問です。この段階まで考えて初めて、ティーチングは価値を持ちます。
4. 思考のスタミナ(知的忍耐力)を鍛える3つの習慣

「すぐに教わる」クセを脱却し、粘り強い思考力を手に入れるためのトレーニング法を紹介します。
① 「あと5分」だけ粘る
「わからない」とペンを置きたくなった瞬間から、タイマーで5分測って粘りましょう。図を描き直す、問題文を3回読み直す、逆算してみる。この「あと5分の粘り」が、脳の地力を鍛えます。
② ヒントの「小出し」を要求する
先生や親に聞くとき、「答えを教えないで。ヒントだけちょうだい」と言ってみましょう。「どの公式を使うかだけ教えて」「最初の一行目だけヒントを」という風に、自力で解く余地をあえて残すのです。
③ 「なぜわからなかったか」を分析する
答えを知った後、「ああ、そうか」で終わらせてはいけません。「なぜ自分はこの糸口に気づけなかったのか?」「どの知識が欠けていたのか?」という敗因分析を自分で行うことが、次の「自力」に繋がります。
5. 【保護者向け】「教えない勇気」を持つ

子どもが悩んでいる姿を見るのは辛いものです。しかし、そこで先回りして教えてしまうのは、子どもの成長のチャンスを奪う行為かもしれません。
- 沈黙を耐える: 子どもが考えている間、親は口を出さずに見守ってください。沈黙は「思考の音」です。
- 問いかけでサポートする: 「答え」を教えるのではなく、「教科書のどこかに似た問題はないかな?」「問題文でまだ使っていない数字はある?」といった「問い」を投げかけ、子どもの脳を動かすサポートに徹しましょう。
結論:自力でたどり着いた一歩にこそ、価値がある

学びの目的は、知識を増やすことだけではありません。「わからない」という霧の中を、自分の足で歩き、光を見つけ出す**「知的なタフネス」**を養うことです。
- 「わからない」は脳がレベルアップする最大のチャンスだと捉える。
- 丸投げの質問をやめ、自分の思考プロセスを言語化する。
- 親切すぎる指導から距離を置き、「自分で解決する喜び」を取り戻す。
ティーチングという名の「おんぶ」を卒業し、自分の足で立ち上がりましょう。その道は険しく、時間もかかるかもしれません。しかし、自分の頭で悩み抜いてたどり着いた正解は、誰にも奪えないあなただけの「真の実力」となるのです。
スタディブレインでは、わからない問題は一切教えません。それは、今回ご紹介したような理由からです。それでも、成績アップやクラス一位・学年一位の実績を出せています。
自分のわからないことを明確にし、それを解決するためにどうしたらいいのかを考える習慣を学生時代につけておいてほしいと願っています。
スタディブレインで、自分で考えられる人になれるように一緒に努力しましょう!
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プロフィール:
和田晶平 スタディブレイン和歌山駅東口教室勉強コーチ
哲学と歴史が大好き 最近は中国古典にハマっている
スタディブレイン和歌山駅東口教室